農地転用に必要な書類(共通書類編)

専門行政書士が解説

農地転用に必要な書類
(共通書類編)

農地転用の手続きには、申請書だけでなく、多くの書類を収集・作成する必要があります。

この書類の数は、一般の方が自分で申請することの障壁となる理由の1つかもしれません。

役所のウェブサイトを見ると、農地転用の申請に必要な書類が列挙されていますが、それらの書類の見本が提供されていないため、どのような書類が必要なのかイメージしにくいです。

そんなわかりにくい農地転用の必要書類について、行政書士が解説します。

農地転用には一般的に農地法第4条、農地法第5条許可とあり、転用目的は様々です。

・一般住宅を建てたい
・農業用倉庫を建てたい
・太陽光パネルを設置したい

などなど
どのパターンでも必ず必要になる共通の書類を今回は解説していきます。

※福岡市を例にして説明しています。

結論:農地転用許可の必要書類がわかります

1.許可申請書

ポイント:各市町村ごとに様式が違います

許可申請書は、都道府県ごとに異なる書式がありますが、申請人の氏名や住所、対象農地の所在地、地目、面積、転用内容など、許可申請に必要な情報を記入する必要があります。

一般的に、市町村役場のウェブサイトには記入例が掲載されており、そちらを参考にして書類を作成することができます。

また、わからない点があれば農業委員会事務局に問い合わせることで、適切なアドバイスを受けることができます。

農地法5条申請の場合、旧所有者と、新所有者両方の名前が必要になりますので注意しましょう。

2.申請地の登記事項証明書(登記簿謄本)

申請する農地1筆ごとに、土地の登記事項証明書を法務局(登記所)で取得します。

この書類には土地の所在地、地目、面積(地積)、所有者などの情報が記載されます。

法務局には、土地の所在地による管轄がありますが、他の法務局の管轄でも取得が可能です。

取得には費用がかかり、窓口での交付請求の場合は600円、オンライン申請で郵送受け取りの場合は500円、オンライン申請で窓口受け取りの場合は480円です。

ポイント:土地所有者の住所が、登記事項証明書の記載と異なる場合には所有者の繋がりのわかる書類が必要

提出する際には、発行から3か月以内のものであることに留意し、所有者の住所が現住所と異なる場合は、所有者の繋がりのわかる書類が必要です。

例えば住民票などがあります。

3.公図(字図)

公図とは、申請地の地番を確認するために必要な書類です。
登記簿謄本と同様に法務局で取得できます。

申請地を赤枠で囲むなどして、わかりやすいようにしておきましょう。

また、公図があれば隣接地の地番もわかるため、登記記録も調べられます。

一般的に、公図には発行から一定期間の制限がありませんが、市町村によって異なる場合があります。また、公図が原本でなくても代替可能かどうかは、市町村に問い合わせてください。

4.位置図・付近見取図

申請地の位置を示す地図は、農業委員会が現地調査に使用します。

位置図は、縮尺が1万分の1から5万分の1程度であり、役所や駅などの公共施設との位置関係が分かるものが準備されます。

Googleマップなどの地図でも受け付けられます。

付近見取図は、位置図よりも詳細な地図になります。

住宅地図の写しや市町村で発行されている都市計画図を利用するのが一般的です。縮尺は2,500分の1程度のものが適当です。

5.土地利用計画図・平面図・立面図・排水計画図

土地利用計画図とは、対象農地に設置する施設を示す図面です。

もし、農地を転用する目的が住宅を建てる目的であれば、建築事務所やハウスメーカーから入手できます。

もし手に入らない場合は、自分でCADやPowerPointなどを使用して作成することになりますが、あまり現実的ではないかもしれません。

図面には土地の形状や建設施設の位置、形状などを詳細に記入します。

また、排水設備も記載すれば、後述する排水計画図としても使用できます。

土地利用計画図に記載するもの(福岡市の場合)

・現況平面図と同じ方位、縮尺で作成する
・申請地を赤色で、併用地があれば青色で、それぞれ図示する
・接面道路の幅員を図示する
・建物、工作物について、位置と形を図示し、面積や構造を表記する
・建物や工作物を設置しない場所についても、作業場、駐車スペース、車路、資材置場等があれば、範囲および面積を図示する
・駐車スペースについては車種も、資材置場等については種類や数量も記載
・排水処理方法を、浄化槽、溜枡、くみ取り、水道施設、排水路等として図示

同様に申請する土地に建築する物件の平面図や立面図なども必要です。

これらもハウスメーカーや建築会社にお願いしてもらうのが、一般的です。

6.造成計画縦横断面図・土留構造図

土地の造成をする場合は断面図も添付必要です。
・現況縦横断(黒線)と計画縦横断(赤線)を記入し、切土、盛土の高さが判るよう図示
・切土、盛土により周囲と1m 以上の段差が生じる場合は土留め構造図が必要
(※開発許可の対象とならない事業で、一定面積・高さ以上の切土・盛土を行う場合は、土砂埋立の災害防止に係る法令上の手続きにつき、事前に所管行政庁へ相談のこと)

7.見積書・資金計画書

住宅を建てる場合だと、ハウスメーカーや建築会社が買主に対して必ず提示するものです。

見積書は、一式ではなく、具体的な内訳が記載されたものでないといけません。

資金計画書とは、建築費に対して、現金や、ローンなど、どのような支払い計画があるかを確認する書類です。

資金計画書に関しては、各市町村に書式がありますのでそちらに記入します。

8.資力を証する書類

資力を証明する書類には、預金残高証明書や融資(見込)証明書があります。

これらは金融機関で発行してもらえます。

また、融資承認通知などに金融機関の押印があれば、それを使用することもできますので、農業委員会に確認してみましょう。

9.土地改良区の意見書

対象の農地が土地改良区に属する場合は、土地改良区の意見書を提出する必要があります。

土地改良区に属するかどうかは、その地域を管轄する土地改良区の事務所に問い合わせることで確認できます。

意見書を取得するための申請書類は、土地改良区の事務所で入手できます。

申請書類には土地改良区の役員から印鑑を受け取る必要がありますので、早めに用意することが重要です。

10.水利関係承諾書

水利組合とは、農業用の用排水路の整備などを行うために設立された任意団体であり、多くの水利組合は、都道府県知事の認可を経て土地改良区に移行しましたが、一部の小規模な組織は任意団体のまま存続しています。

水利組合は役所の許認可を受けて設立されたものではないため、役所の管理下にはありません。

そのため、転用する農地が水利組合が管理する水路等を利用しているかどうかは、農地の所有者に直接確認する必要があります。

転用後の敷地からの排水が、道路側溝や公共の下水道、河川に直接流れずに、水利組合が管理する水路を経由する場合、これに対する同意書または承諾書を取得し、提出する必要があります。


11.確約書

「確約書」は、当事者の一方が「確約」するに過ぎず、一方のみが署名捺印するものです。

「念書」ともいい、署名捺印した当事者のみがこれに拘束されます。

申請時に、道路や水路の用途廃止申請や自費工事申請などの手続きが未了である場合に必要です。

まとめ

以上が必要書類の解説でした。

ただし、上記を全て出せばOKというわけではありません。

あくまで一般的に必要になってくる書類をご説明しました。

他にも必要な書類などは市町村や農地の状況に応じて変わります。

だからこそ、農地転用を自身でやるには大変なのです。

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